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を異にするときは、二重起訴も許される。しかし、一つの紛争について二つの判決の存在は許されないので、結局、判決の承認および執行の段階でもう一度判断される。すなわち、二つの外国判決があるときは、先に承認されたものが効力を有することになり、また、すでに確定した内国判決がある場合には、内国判決が優先することになる。
(4) 外国法の適用
抵触規定によって内国法が準拠法に指定された場合には、渉外的要素のない通常の訴訟事件の場合となんら変わるところはない。しかし、外国法が準拠法に指定された場合には、内国法を適用するときとは異なった問題が生ずる。裁判所は、自国の法令については知る義務を負い、当事者の主張や立証にかかわりなく、当然に適用しなければならない。外国法についても、わが国の通説では、その存在と内容は職権によって調査し、当事者の主張や立証にかかわりないとしている。したがって、内外の公官庁に照合しまたは調査を依頼し、あるいは鑑定等の方法で調査しなければならない。外国法の適用にあたっては、外国法の解釈の問題が生ずる。外国法を法律として適用する以上、その外国で行われている解釈に従って行われなければならない。したがって、外国法の適用を誤った場合、外国法も法律であるとの立場に立てば、外国法も内国法を適用した場合と同様、上告理由になりうると解される。
5. 外国判決の承認と執行
(1) 外国判決の承認の意義
ある国の裁判所でなされた判決は、その国の主権の行使の結果であるから、その国の領域内において効力を認められるが、他の国の領域内において当然に効力を認められるものではない。他の国の領域内においてその判決の効力を認められるためには、その国で承認される必要がある。したがって、わが国で外国判決の効力が認められるためには、わが国における外国判決の承認の要件を具備し、一定の手続をふまなければならない。同様に、外国においてわが国の判決がその効力を認められるためには、その国で必要とする要件を備え、そのための手続をふまなければならない。外国判決の承認とは、外国の裁判所の行った裁判等がその外国法上有する効力を、わが国においてそのまま認めることである。外国判決の効力とは、その主観的範囲(判決の効力の及ぶ人の範囲)、客観的範囲(既刊力の範囲)およびその他の効力をいう。外国判決の承認に関しては、一般国際法または条約で

 

 

 

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